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『従業員のメンタルヘルス管理』その② 弁護士 宮川 敦子

(その①の続きです!)

2.ストレスチェックの実施に際しての留意点

(1)プライバシーの保護

前述のとおり、検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、
本人の同意なく事業者に提供することは禁止されています。

事業者に提供されたストレスチェック結果や面接指導結果などの個人情報は、適切に管理し、
社内で共有する場合にも、必要最小限の範囲にとどめることが必要です。

(2)不利益取扱いの禁止

ストレスチェックを受検しないこと、労働者が面接指導の申出をしたこと、
検査の結果の提供に同意しないこと等を理由に、
従業員に対して懲戒処分その他の不利益取扱いを行うことは禁止されておりますのでご注意ください。

また、面接指導の結果を理由として、解雇、雇止め、退職勧奨、
不当な動機・目的による配置転換・職位の変更を行うこと等も禁止されています。

Ⅲ 事後の対応策

1.従業員がメンタルヘルス不調に陥った場合には

未然予防を行っていたとしても、従業員がメンタルヘルス不調に陥る事態が発生することを
100%防ぎ切ることはできません。

従業員の業務上のミスの増加、作業能率の低下等が生じ、
その原因として従業員のメンタルヘルス不調が疑われる場合、
そのまま就業させていると生産性の低下や重大事故につながりかねません。
従業員のメンタルヘルス不調が疑われる場合には、次のような対応を行うことが考えられます。

2.対応策

(1)就業場所の変更、業務内容の転換、

労働時間の短縮等

将来予想されるトラブルを未然に防止するために、
企業は当該従業員と話し合った上で、就業場所の変更、業務内容の転換、
労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、当該従業員に合った措置を取ることになります。

(2)休職

就業を継続することが困難な状態である場合において、
休職という選択肢を取らざるを得ないときにも、企業は当該従業員とよく話し合い、
双方納得した上で、休職という選択肢を取ることが望まれます。
当該メンタルヘルス不調が業務上の傷病であれば、労災保険給付の支給対象となります。

そして、療養のための休業中およびその後30日間は、
原則として解雇することができません(労働基準法19条)。
他方、当該メンタルヘルス不調が私傷病(業務外の傷病)による場合ですが、
多くの会社は、就業規則に、会社が従業員を普通解雇できる事由として
「身体又は精神の障害等により業務に耐えられないと認められたとき」と規定しています。
つまり、私傷病による長期欠勤は普通解雇事由に該当します。

しかし、実務では、普通解雇で対応するのではなく、休職で対応するケースがほとんどです。
なぜなら、使用者が労働者に休職制度を適用する余地があるのにこれを適用せず、
労働者を解雇した場合には解雇権の濫用として違法となるからです
(東京地判平成17年2月18日労判892号80頁)。
休職制度が、解雇猶予制度といわれる由縁です。

就業を継続することが困難な状態であるにもかかわらず、
従業員が、休職に同意しない場合、会社として、休職命令を発令することが考えられます。
将来、労働者が休職命令の効力を争って訴訟を提起することも想定されますので、
休職命令の発令を考えざるを得ないような場合には、
当法人にご相談ください(訴訟では、休職命令の発令の前提要件となる休職事由は、
使用者が主張立証責任を負うことになります。)。

Ⅳ 最後に

今回は触れることができませんでしたが、従業員の休職に関しては、

①従業員に対する休職命令発令の可否、
②休職中の従業員の復職可否の判断基準、
③復職にあたっての企業の支援方法等、様々な問題が生じます。

従業員の休職に関する問題を抱えられた際には、事前に当法人へご相談ください。

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