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不正競争防止法上の「営業秘密」について その② 弁護士 森 春輝

(その1の続きです!)

(2)秘密管理性

秘密情報が不正競争防止法上の営業秘密に該当するかどうかの判断に当たっては,
秘密管理性の有無が争点となったものが多く,秘密管理性が否定される裁判例も少なくありません。
営業秘密につき,どの程度の管理をしていれば秘密管理性が認められるのかが問題となります。
経済産業省が公表している「営業秘密管理指針」によれば以下のように考えられます。

秘密管理性が満たされるためには,
営業秘密保有企業の秘密管理意思(特定の情報を秘密として管理しようとする意思)が
秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され,
当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要があります。

具体的に必要な管理措置の内容・程度は,
企業の規模,業態,従業員の職務,情報の性質その他の事情によって異なり,
従業員等が情報に接するときに秘密管理意思を認識できることが
必要であると考えられています。

秘密管理措置としては,まず,秘密情報がその他の一般情報と合理的に区分できることが求められます。
そして,合理的区分に加えて,その情報が秘密情報であることが分かる程度の措置
(マル秘の表示や,パスワードによるアクセス制限等)が必要です。

具体例としては,以下のような方法が挙げられます。

①紙媒体の場合

・文書に「マル秘」や「機密情報」等秘密情報であることが分かる表示をする。

・施錠可能なキャビネットに保管する。

②電子媒体の場合

・記録媒体や電子ファイル名へのマル秘表示をする。

・情報を閲覧するためのパスワードを設定する。

③製品や試作品等の物件に営業秘密が化体している場合

・当該物件が保管されている場所の扉に「関係者以外立入禁止」の張り紙を貼る。

・入館セキュリティカードがなければ当該物件が保管されている場所への出入りができないようにする等部外者の立ち入りを制限する。

・営業秘密に該当する物件を営業秘密リストとして列挙し,当該リストを営業秘密物件に接触しうる従業員内で共有する。

④無形のノウハウ等

・営業秘密のカテゴリーをリスト化し,紙媒体等で可視化する。

・営業秘密の範囲が従業員にとって明らかな場合には,当該情報の範囲・カテゴリーを口頭ないし書面で伝達する。

具体的な状況によって求められる秘密管理措置は異なるため,
上記の方法を必ず取らなければならないとか,
形式的に上記方法を取っていれば営業秘密に該当すると言うわけではありません。

これまでの裁判例では,パスワード等によるアクセス制限や
秘密であることの表示等がなかったにもかかわらず,
全従業員数が10名であり,性質上日常的なアクセスを制限できないことを考慮して
秘密管理性を肯定した裁判例(大阪地判平成15年2月27日・平成13年(ワ)第10308号)や,
顧客情報の写しが上司等に配布されたり,自宅に持ち帰られたり手帳等で管理されて
破棄されなかったりしていたとしても,営業上の必要に基づくものであり,
従業員が顧客情報を秘密であると容易に認識しうるようにしていたとして
秘密管理性を肯定した裁判例(知財高判平成24年7月4日・平成23年(ネ)第10084号)
などがあります。

反対に,秘密管理性を否定した裁判例として,
秘密情報管理規程上は秘密情報を貸与,使用・利用等させる場合は秘密保持の履行を
書面で確約させるとともに秘密情報の漏洩防止のために適切な
措置を講じなければならない旨規定されているにもかかわらず,
情報開示にあたって秘密保持の履行を書面で確約させたり,
口頭でその旨伝えていなかったことから秘密管理性を否定した裁判例
(東京地判平成24年4月26日・平成21年(ワ)第38627号)や,
秘密情報が従業員全員が閲覧可能な会社のパソコンに保存され,
情報の閲覧にパスワードの設定もなく,情報をプリントアウトして
全従業員に配布し従業員は机に保管したりかばんに入れて持ち歩いて
事後に回収しなかったことから秘密管理性を否定した裁判例
(東京地判平成16年4月14日判時1862号168頁)等があります(※6)。

※注釈

6  大阪弁護士会友新会編「最新不正競争関係 判例と実務(第3版)」(2016・民事法研究会)50頁~52頁

(その③に続きます!)

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