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『パワー・ハラスメントについて』その2 弁護士 齋藤 拓 

(その1の続きです!)

3 パワハラの6つの類型

厚生労働省は,以下のとおり,パワハラの6つの類型を公表しています 。

(1)暴行・傷害などの身体的な攻撃
(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言などの精神的攻撃
(3)隔離・仲間外し・無視などの人間関係からの切り離し
(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害などの過大な要求
(5)業務上の合理性なく,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じられることや,
仕事を与えないことなどの過小な要求
(6)私的なことに過度に立ち入ることなど,個の侵害

冒頭で例示した「新入社員以下だ。もう任せられない。」,
「何で分からない。おまえは馬鹿。」などといった言動は,
上記(2)の精神的攻撃に当たり,違法となる可能性があります。

これらと同様の上司の部下に対する発言が問題となった訴訟において,
裁判所は,これらの発言は,屈辱を与え心理的負担を過度に加え,
また名誉感情をいたずらに害する行為であり,
注意又は指導として許容される限度を超えていることを理由に,
不法行為に当たり違法であると判断しました。

また,使用者である会社にも使用者責任(民法715条)が成立し,
損害賠償責任を負うと判示しました(東京地裁平成26年7月31日判決)。

3 パワハラ防止義務の法制化

今国会に提出される予定の関連法案では,
パワハラを
「i)優越的な関係に基づく,
ii)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により,
iii)労働者の就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)」
と定義した上で,パワハラ防止対策を講じる義務が企業にあることが明記される予定です。

そして,企業に対して防止対策を義務付けるに当たっては,
男女雇用機会均等法に基づくセクハラ防止のための指針の内容や裁判例を参考としつつ,
指針を策定することが適当であるとされ,
企業が講ずべき措置等の具体的内容としては,
(1)パワハラが懲戒事由となること等の就業規則等への規定,
(2)相談体制の整備,
(3)社内調査体制の整備,
(4)当事者のプライバシーの保護等の措置などが挙げられています。

4 企業が採るべき具体的対応策

以上の現状を踏まえ,企業が採るべき具体的対応策として考えられることは,
以下のとおりですが,このうち下記4から6については,マニュアルを策定し,
実際に問題が起きた場合に適切に対処できるよう備えておくことが必要です。

1.パワハラに当たる言動を行った者については,
厳正に対処する方針及び対処の内容を就業規則等に規定すること
2.社内報,パンフレット,社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に,
パワハラの内容及びこれがあってはならない旨の方針を記載した上で配布等を行い,
併せて周知,啓発するための研修等を実施すること
3.相談への対応のための窓口をあらかじめ定めること
4.相談窓口の担当者が,相談に対し,その内容や状況に応じて適切に対処できるようにすること
5.パワハラが生じた事実が確認できた場合は,
行為者に対する措置及び被害者に対する措置をそれぞれ適正に行うこと
6.行為者及び被害者のプライバシー保護のための措置を講ずること
7.行為者と被害者との間の関係改善に向けての援助,
行為者と被害者を引き離すための配置転換,
行為者の謝罪,被害者の労働条件の不利益の回復,
管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による
被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること

5 おわりに

パワハラ防止義務の法制化は,昨年6月29日に成立した働き方改革関連法と併せて,
労働環境の改善のための重要な制度となります。

労働者一人一人が,その職能を活き活きと発揮することができる職場環境の整備が,
企業には求められています。

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