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「従業員のSNS炎上対策」その2 弁護士 森 春輝

(その1の続きです!)

4 従業員向けSNSポリシー・ガイドラインの策定

従業員向けのSNSポリシー等には,
以下のような内容を盛り込むことが考えられます。

まず,従業員にSNSの特性やSNS投稿のリスクを認識させる記載をすべきです。

次のような内容が考えられます。

・SNSはインターネット上で世界中に公開されており,
一度拡散された投稿は削除しようとしても事実上不可能であることを理解しましょう。

・SNSの投稿は拡散されやすく,
誤った投稿でも瞬く間に世界中に拡散されてしまうおそれがあることを認識しましょう。

・投稿内容によっては,会社のブランドイメージを傷つけたり,
会社に損害を与える可能性もあることに十分注意しましょう。

・匿名のアカウントであっても,SNSが炎上すると投稿した個人が「特定」され,
個人情報が公開されるおそれがあります。
自分の身を守るためにも不用意な投稿は控えましょう。

その上で,禁止すべき事項も記載します。

まず,従業員は業務上会社から貸与された携帯電話や,
会社の備品であるパソコンを使用することがありますが,
会社の携帯電話やパソコンで個人のSNSを利用することは原則として禁止すべきです。

一方,従業員個人の端末・アカウントでSNSを利用すること自体を禁止することは出来ません。
もっとも,投稿内容によっては禁止できる場合もありますので,次のような記載とすることが考えられます。

・お客様の個人情報(いつ来店したのかや購入状況等の情報も含みます。)や
商品流通経路,卸売価格,小売価格の情報等業務を通じて知った情報等は守秘義務の対象です。
これらをSNSに投稿することは守秘義務違反や就業規則違反となりますから絶対に行ってはいけません。

・業務中は業務に専念する義務があります。
業務中の私的な写真撮影や動画の撮影自体が許されません。
もちろんこれらの動画や写真を投稿することも許されません。

また,以下のように,投稿を避けるべき内容や
注意すべき内容を記載しておくことも考えられます。

・自社製品や自社サービスが他社製品より優れているという内容の投稿は避けるようにしましょう。
ステルスマーケティングだと捉えられてしまうおそれがあります。

・他社製品や他社サービスの評価を下げる内容の投稿は避けるようにしましょう。

・自社の従業員であることを明らかにして投稿する場合,
個人の投稿が会社を代表した意見・見解ではないことを明示するようにしましょう。

・他人への誹謗中傷や差別的発言,
違法行為の自慢等は炎上しやすい内容ですので,避けるべきです。

そして,仮に不適切な投稿でSNSを炎上させてしまい,
会社に損害が生じた場合には,以下の可能性があることも明示しておきましょう。

・SNSへの不適切な投稿により,
会社のブランドイメージや信用を損なわせた場合,
また,守秘義務や就業規則に違反した場合には,
懲戒処分の対象となる可能性があります。

・SNSへの不適切な投稿により,会社に損害が発生した場合には,
不適切投稿をした従業員個人に対し,損害賠償請求をする可能性があります。
この場合,店舗が休業に追い込まれた場合の休業損害など請求金額が多額に及ぶ可能性もあります。
ちょっとした気の緩みが大事になるリスクを秘めていることを十分に認識しましょう。

上記の禁止事項や注意事項の記載に加え,
会社内外のSNS炎上事例を紹介することも考えられます。
具体的な事例が分かることによって,従業員も自分が避けるべき投稿を認識しやすくなるでしょう。

5 従業員教育

上記4のようなSNSポリシー等を策定・公開するだけでは,
従業員にSNS利用のリスクを十分に理解させることは出来ません。
策定したSNSポリシー等の従業員への周知を徹底することが重要です。

従業員への教育は,まず入社時が一つのタイミングです。
守秘義務契約書の締結や誓約書をただ提出させるだけではなく,
入社時研修にSNSポリシー等を利用したプログラムを含めるべきです。

また,入社時の研修だけでは時間の経過と共に危機感が薄れてしまうことも考えられます。
最新の炎上事例などを盛り込みながら,定期的にSNSに関する研修を実施するのが望ましいものと考えられます。

6 会社側の対応指針

上記のようなSNSポリシー等の策定・公開や従業員教育だけでなく,
実際に不適切な投稿がされ炎上してしまった場合に備え,
会社として初動対応の指針を立てておくことで,
さらに「燃え広がる」ことを防ぐことができます。

部署によって異なる対応をしないよう対応部署を一本化しておく,
調査の手順等をまとめておく等,迅速に処理できる用意ができていれば,
炎上はしたもののその処理が適切であるとの評価を受けられる可能性もあります。

炎上はいつ起こってしまうかわかりません。
企業としては,従業員が炎上を発生させることのないよう出来る限りの対策を採っていくことが重要です。

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