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『消費者契約法の改正について』その2  弁護士 齋藤 拓

(その1の続きです!)

第3 不利益な事実を告げなかったことによる取消しに係る条件の緩和

今回の改正前は,事業者が消費者を勧誘するに当たり,
重要事項に関し消費者の利益となる旨を告げ,かつ,
重要事項について消費者の不利益となる事実を
「故意に」に告げなかったことによって,
消費者がその不利益となる事実が存在しないと誤認して契約を締結したときは,
消費者は消費者契約を取り消すことができるとされていました。

たとえば,通信契約の勧誘の際に,事業者が消費者に対し
「高速・大容量のインターネット通信が可能です。」と,
メリットについてだけ説明する一方,
通信環境によっては通信速度が低下する場合があるという
デメリットを敢えて告げないような場合です。

しかし,消費生活センター等で消費者からの相談を受ける消費生活相談員の多数が,
事業者の「故意」を消費者が証明することは難しく,
この規定は利用しにくいと指摘していました。

そこで,改正消費者契約法においては,事業者に,故意だけではなく
「重大な過失」が存在する場合にも取消しが認められることになりました。

重大な過失とは,僅かの注意をすれば容易に有害な結果を予見して回避することができたのに,
漫然と見過ごしたというような,ほとんど故意に近い著しい不注意をいいます。

たとえば,マンション販売事業において,
隣地に建物が建設される計画があるにもかかわらず,
日照が良好であると事業者が説明したというケースにおいて,
隣地の建物の建設計画が少なくとも近隣の不動産業者には周知の事実となっていたという場合には,
事業者に重大な過失が認められると考えられます。

そこで,事業者としては,消費者契約に関連した不利益な事実の調査活動を実施するとともに,
不利益な事実を消費者に説明したことを記録に残すため,
重要事項説明書等の書面を作成することが有益であると考えられます。

第4 無効となる不当な契約条項の追加

消費者契約法8条及び8条の2は,事業者の損害賠償責任を免除したり,
消費者の解除権を放棄させる条項を無効とする旨を定めていました。

これに加え,改正消費者契約法は,以下のとおり,
無効とされる不当な契約条項を追加しました。

1 事業者が自らの損害賠償責任の有無・限度や,消費者の解除権の有無を決める条項の無効

事業者が,自らの債務不履行や不法行為に基づく損害賠償責任の有無又は限度を決めたり,
事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権の有無を事業者自らが決める条項も,
損害賠償責任の免除や消費者の解除権を放棄させる条項と同様に
不当であると考えられることから,改正消費者契約法において,無効となる不当な条項に加えられました。

たとえば,事業者が自らの損害賠償責任の有無を決める契約条項としては,
「当社が過失のあることを認めた場合に限り,当社は損害賠償責任を負うものとします。」
といった定めが考えられます。

また,「当社が損害賠償責任を負う場合,その額の上限は10万円とします。
ただし,当社に故意又は重過失があると当社が認めたときは,
全額を賠償するものとします。」などとして,
事業者が自らの損害賠償責任の限度を決める契約条項は,無効となります。

さらに,事業者が消費者の解除権の有無を決める契約条項としては,
「当社が本規約に違反した場合であっても,当社が認めた場合に限り,
会員は利用契約を解除することができるものとします。」といった定めが考えられます。
消費者との契約や約款に,これらのような条項を設けている事業者は,
これらの規定を修正する必要があります。

2 消費者の後見開始の審判等を理由として事業者に解除権を付与する条項の無効

成年後見制度は,判断能力が不十分な成年でも
安心して生活できるような社会を作るという理念に基づき定められています。
それにもかかわらず,後見・保佐・補助の審判を受けたことのみを理由として,
事業者が消費者契約を解除できるようにすることは不当であるといえますから,
改正消費者契約法は,このような解除条項を無効とする旨を定めました。

もっとも,たとえば,「当社は,利用者の心身の状況に照らし,
会員が本サービスの提供を受けることが困難であると客観的に認められるときには,
利用契約を解除することができます。」などと規定したうえで,
後見開始の審判等の事実を,サービスの提供を受けることが困難であると
認められることの一つの判断材料とすることは,
必ずしも不当な契約条項ではないと考えられます。

そこで,事業者においては,提供されるサービスの性質に応じて,
消費者との契約の解除が認められるべき場合を検討したうえで,
問題となる契約条項や約款を見直すことが必要となります。

第5 おわりに

以上のように,改正消費者契約法は,契約の取消しの主張や無効を認める状況を複数追加しました。
しかし,事業者が消費者契約法に触れることを理由に不当なクレームを受けてその対応に追われることは,
営業活動の効率性を阻害することになりかねません。
事業者は,消費者契約法の各規定を検討し,無用なトラブルを回避することが求められます。

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