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消費者契約法の改正について その② 弁護士 宮川 敦子

(その①の続きです!)

4 Ⅱ 重要事項の範囲の拡大

(1)改正前
改正前の消費者契約法においても,
事業者が「重要事項」について事実と異なることを告げた場合,
消費者は契約を取り消すことができる旨が規定されていました。

しかし,改正前の消費者契約法においては,
不実告知による取消しの対象となる「重要事項」は,
「物品,権利,役務その他の消費者契約の目的となるものの質,用途その他の内容,
及び対価その他の取引条件」と限定されていました。

そのため,たとえば真実に反して「あなたのパソコンはウィルスに感染しており,
個人情報がインターネット上に流出するおそれがある。」と言われ,
ウィルスを駆除するソフトを購入した事例では,
そのソフトを購入しようとした動機に関して事実と異なる説明があっただけで,
ソフトそのものの内容等について事実と異なる説明があったわけではないため,
改正前の消費者契約法の「重要事項」には該当せず,同条に基づく取消しはできませんでした。

(2)改正後
改正後の消費者契約法は,「重要事項」の範囲を拡大し,
「物品,権利,役務その他の当該消費者契約の目的となるものが
当該消費者の生命,身体,財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために
通常必要であると判断される事情」も「重要事項」に該当することとしました(改正法4条5項3号)。

つまり,目的物の質・内容・取引条件等に限定されていた「重要事項」が,
消費者が当該商品を購入する動機に関する事由にまで拡大されました。

上記のウィルス駆除ソフトを購入した事案でも,
消費者は契約を取り消すことができることになります。

その他,真実に反して「あなたの顔色からすると胃腸に異常があり,
このまま放置すると胃潰瘍,急性胃腸症,ひいては胃がん等を引き起こします。」と言われ,
健康食品を購入した事例については,
胃潰瘍等に罹患することは「身体についての損害又は危険」であり,
これを回避するために,健康食品が通常必要であると判断され,
消費者は契約を取り消すことができることになります。

改正前の消費者契約法によっては契約の取消しができなかった上記事案についても,
「重要事項」の範囲が拡大されたことにより,契約の取消しを行うことができることになりました。

5 Ⅲ 取消権の行使期間の伸長

不当な勧誘を受けて契約を締結した場合において取消権を行使できる期間は,
改正前の消費者契約法では,6か月間でした。

改正後の消費者契約法では,不当な勧誘を受けた消費者をできる限り救済するために,
取消権の行使期間は1年間に伸長されました(改正法7条1項)。

6 さいごに

消費者向けのサービスを展開する企業にとって,
消費者契約法を始めとする消費者を保護する法律に関しては,
慎重な検討が必要となります。消費者契約法等に違反したことにより,
せっかく締結した契約が後日,無効と判断されるおそれがあるからです。

また,消費者団体による差止訴訟等(※1)の対象となったり,
消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
(「消費者裁判手続特例法」と呼ばれています。)に基づき集団訴訟を提起されるおそれ(※2)もあります。

かかる事態に陥ることを予防するために,
当法人では最善のリーガルチェックのお手伝いさせていただきます。

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※1 消費者団体(内閣総理大臣から認定を受ける必要があります。)は,
事業者の消費者契約法に違反する特定の行為
(改正法4条1項から4項に規定する勧誘行為,
改正法8条から10条において禁止する条項を含む契約書の締結)の
差止請求ができる旨の規定があります(改正法12条)。

※2 消費者裁判手続特例法は,単体では弱者である消費者の被害を集団的に救済する目的で制定されました。
同法に基づく請求は,いわゆる二段階型になっており,第一段階では,
消費者団体(内閣総理大臣から認定を受ける必要があります。)が訴訟を提起し,
事業者が消費者らに対して,損害賠償義務を負うことの確認が行われます。
第二段階では,個々の消費者に対していくら支払うかの判断がなされます。

当事務所は、(財)日本情報処理開発協会(JPDEC)より個人情報の適切な取扱いを行う事業者に付与される「プライバシーマーク」を取得しています。

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