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弁護士法人Martial Artsの『EC相談室!』~スタッフの肖像権やプライバシー~ その② / 弁護士吉新拓世 弁護士齋藤 拓

(その①の続きです!)

第3 スタッフが退職してしまった場合について

1 スタッフの退職後一定期間,画像や記事の利用を続けることは,直ちに「違法」とはならないでしょう。

(1)「承諾」の範囲は,スタッフの退職後には当然には及びません。

ご紹介した東京地方裁判所の裁判例では,
顧客が「承諾」した内容と異なる写真の使われ方がされたために,
東京地方裁判所は「違法」であると判断しました。

ですから,「違法」かどうかの判断には,「承諾」の内容・範囲が大事になってきます。

会社が,事前にスタッフの「承諾」を求める場合に,
スタッフが退職することを想定していることは稀でしょうから,
会社もスタッフも,スタッフの退職後の画像や記事の取り扱いについては,
お互いに考えていない場合が多いでしょう。

このような場合に,スタッフが会社に与えた「承諾」に,
退職後の画像や記事の利用についての「承諾」が含まれているかどうか考えてみると,
もちろん,会社とスタッフとの関係など,具体的な状況によっても左右されますが,
含まれているとはいえない場合が多いと考えられます。

なぜなら,自分が辞めた会社のウェブサイトや広告物に,
いつまでも自分の画像や記事が掲載されていることは,
特別にその画像や記事が掲載され続けることを望んでいたという事情がない限り,
快く思わない場合が多いと考えられますし,
退職後も掲載され続けることまで想定して「承諾」したとはいえない場合が多いと考えられるからです。

ですから,スタッフが自らの画像や記事の利用に関して会社に事前に与えた「承諾」の内容は,
スタッフが会社に在籍している限りでの利用ということが,
暗黙の前提となっていたと考えるのが合理的です。

(2)退職後,一定期間内に利用を中止すれば「違法」とはならない場合が多いでしょう。

一方で,ウェブサイトに掲載されているスタッフの画像や記事を削除したり,
差し替えのために発行済みの広告物を廃棄し,新しい広告物を作成・発行することは,
相当の時間や費用が発生してしまうことは,当然に予測できることです。

このような問題は,会社が事前にスタッフに「承諾」を求めた時点においても,
スタッフの側としても合理的に推測できることですから,
ウェブサイトの更新や広告物の差替えに必要な一定期間は,
スタッフは退職後も自らの画像や記事が利用され続けることについて,
「承諾」したと見なされても仕方がないといえるでしょう。

したがって,スタッフが退職した場合に,
直ちにそのスタッフが登場する画像や記事の利用の継続が「違法」となることはなく,
ウェブサイトの更新や広告物の差替えに通常必要とされる期間内は,
「違法」とはならない場合が多いと考えられます。

2 トラブル防止のために,同意書の作成をお勧めします。

このように,黙示の承諾,暗黙の了解という考え方は,
そもそも明確な「承諾」がないために,その「承諾」の内容を,
会社とスタッフそれぞれの具体的な状況に応じて推測しようという考え方です。

このように,ある約束をした当事者それぞれが明確に想定していなかった事柄については,
当事者それぞれの具体的な状況に応じて,
「普通はこう考えるよね。」といえるような内容の合意や承諾があったとしてしまう考え方は,
日本の裁判所ではよく見受けられる手法です(当事者の合理的意思解釈と呼ばれます。)。

しかし,「普通はこう考えるよね。」というときの「普通」は人によって考え方が異なります。

スタッフも人ですし,承諾を求めた会社側の職員も人です。
「普通」の考え方が異なるところにトラブルが発生するのです。

さらにいえば,裁判官も人です。
ですから,裁判官が会社の思うとおりに「承諾」があることや
「承諾」の範囲を認めてくれるのかは不透明であり,
結局裁判の決着がつくまでは結論が分からないということになってしまうのです。

そこで,将来,会社とスタッフとの間でトラブルが起こらないように
(万一トラブルが発生しても「承諾」の中身が明確になるように),
画像や記事の利用目的に合わせて,
会社とスタッフとの間において同意書を取り交わしておくことをお勧めします。

同意書に画像や記事の利用目的や利用期間などを定めておけば,
会社にとっては,「承諾」の範囲内の利用であればスタッフからの不当な要求に応じる必要がなくなりますし,
スタッフにとっても,会社が「承諾」の範囲外の画像や記事の利用を控えることになり,
双方にメリットとなります(ただし,スタッフの退職後も無期限に会社が画像や記事を無償で利用できるという
「承諾」をスタッフに求めた場合には,あまりにも行き過ぎた内容であり,
スタッフの肖像権やプライバシー権に対する不当な権利の制限であるとして,
無効となる可能性があります。)。

下記に同意書の雛形を掲載いたしますので,参考にして下さい。

肖像権等使用同意書

(※)この部分は「退職後も●年間は」などと期間を明記してしまうことも考えられます。

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