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『残業代への備えを!』② 弁護士 飛鳥井 雅崇

『残業代への備えを!』② 弁護士 飛鳥井 雅崇

(①の続きです!)

4 会社が採りうる予防策

(1)裁量労働制(労働基準法第38条の3、同法第38条の4)

一定の業務(※注1)を行う従業員について、実際の労働時間数にかかわりなく、
労使協定または労使委員会の決議で定められた時間数だけ労働したものと
「みなす」ことができる制度です(いわゆる裁量労働制)。

1日を8時間労働とみなす場合には、実際には10時間労働を行ったとしても
2時間分の残業代を支払う必要がないため、残業代の支払を抑止できるという点で
極めて有用な制度と言えます。

もっとも、制度を利用できる業務が限定されている点、
労使協定または労使委員会の決議が必要であるなど事前の手続も必要となる点に
特徴があるため、かかる制度を導入する際には遺漏なく対応することがポイントになります。

※注1) 研究開発、情報処理システムの分析・設計、取材・編集を行う従業員、
デザイナー、プロデューサー・ディレクター業務等が対象業務となる専門業務型
(労働基準法施行規則第24条の2の2第2項)と、
「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって…
裁量に委ねる必要がある」業務が対象の企画業務型があります。

(2)変形労働時間制(労働基準法第32条の2、同法第32条の4、同法第32条の5)

労働基準法は、1日8時間週40時間労働制を大原則としていますが、
一定期間のうち1週間あたりの平均が週に40時間を超えない範囲内であれば、
週40時間を超えた週や1日8時間を超えた日があった場合でも
残業代を支払わなくても良いとする制度です(いわゆる変形労働時間制)。

この制度を利用することで、繁忙期や週始めに残業を行ったとしても、
閑散期や週の半ばには早めに退社してもらうなどしてトータルでの残業代を
減少させることが可能となります。

時期や日によって繁閑が激しい事業を行っている場合に大きな効果を発揮しますが、
慢性的に業務が忙しい場合には大きな効果はありません。
また、この制度も労使協定の締結を行って労働基準監督署に届け出るなど
事前に手続を行うことが必要です。

(3)固定残業代(みなし残業代)

あらかじめ一定の残業代を固定額として支払うことも可能です。
先ほどの例でいえば、月給30万円のうち残業手当として
10万円分を組み込むことで、時間単価計算の基礎となる基本給が20万円に下がり、
時間単価は1250万円となります (※注2)。

時間単価が1250円の従業員が、
月40時間の残業を行った場合、残業代は6万2500円となりますが、
すでに残業手当として10万円分を支払っていることになるため、
残業代を支払う必要はなくなります。

具体例と比較すると2年間で225万円もの差が生じるのです。
この方法を用いるためには、労働契約や就業規則、賃金規程において
基本給部分と固定残業代部分が金額で明確に区分されている必要がある
(最高裁判決平成6年6月13日最高裁判所裁判集民事172号673頁参照)ほか、
裁判例においてもいくつか要求されている条件があるため、
導入する際には慎重に検討する必要があります。

なお、この方法を従業員の入社後導入する場合、
従業員の労働条件を切り下げていることになりますので、
原則として従業員の同意が必要になります。

この同意をスムーズに得るためには、
現在支給している給料の総額を上げることがポイントです。

すでに30万円の給料を支払っている従業員に対しては、
総額を31万円に引上げます(基本給21万、残業手当10万にするなど)。

そうすることで、従業員としても残業を全くしない場合でも
給料の総額が上がることで納得感も生じますし、
他方で会社としては残業代請求をされた場合のリスクを軽減することが出来るのです。

※注2)
あまり基本給を下げすぎると、最低賃金法の規制に抵触する恐れがあるので
その点も注意が必要です。

5 高度プロフェッショナル制度について

昨年1月から開催されていた第189回通常国会では、
職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、
高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、
健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、
残業代を発生しないこととする、
いわゆる「高度プロフェッショナル制度」の導入が議論されていました。

しかし、野党から「残業代ゼロ法案」であるなどと強い批判を受けて成立は見送られ、
本年1月から開催されていた第190回通常国会においても同様に成立が見送られました。

今後本制度が導入されるかどうかは不透明な要素がありますが、
導入された場合には、残業代抑止の観点からは強力な制度となります。

6 最後に

残業代問題において重要なことは予防です。
少しでも会社の現状にご不安な点がありましたら是非当法人まで御相談下さい。
最善の予防策を考えさせて頂きます。

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