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『消費者契約法の改正について』その1  弁護士 齋藤 拓 

第1 はじめに

2018年6月8日,消費者契約法の一部を改正する法律
(以下「改正消費者契約法」といいます。)が成立し,
2019年6月15日から施行されました。

消費者契約法は,消費者と事業者との間で締結される契約(以下「消費者契約」といいます。)について,
事業者との情報や交渉力の格差の観点から,消費者を保護するための法律です。

このような目的から,消費者契約法は,主として
①事業者の不当な勧誘による消費者契約の取消しと,
②消費者の利益を不当に害する条項を無効にする旨を定めています。

改正消費者契約法は,主に,消費者契約を取り消すことができる事由と,
無効となる条項を新たに追加して,消費者をより厚く保護する内容を定めており,
事業者に及ぼす影響は少なくありません。

そこで今回は,改正消費者契約法について,紙幅の関係から,
事業者が特に注意しなければならない内容を取り上げて解説します。

第2 事業者の不当な勧誘による消費者契約の取消し事由の追加

消費者契約法4条は,事業者の不当な勧誘によって,消費者が困惑したり,
誤認したりして締結した消費者契約を,取り消すことができることを定めています。

改正消費者契約法は,
①消費者が困惑した場合の契約取消し事由を追加するとともに,
②事業者が不利益な事実を告げなかったことにより,
消費者が誤認した場合に,契約を取り消すことができる条件を緩和しました。

1 消費者を困惑させることによる消費者契約の取消し事由の追加

(1) 社会生活上の経験不足の不当な利用

消費者の進学,就職,結婚,生計など,
社会生活上の重要な事柄に関する願望や,容姿,体型など,
身体の特徴又は状況に関する重要な事柄への願望が実現するかのように勧誘された場合,
消費者は,一定の条件の下に消費者契約を取り消すことができるようになりました。

つまり,これらの事柄に関する消費者の願望について,
社会生活上の経験が乏しいために,消費者が過大な不安を抱いているのを事業者が知りながら,
その不安をあおって,合理的な根拠がないにもかかわらず,
商品やサービスが願望の実現のために必要であると告げて消費者を困惑させて,
消費者契約を締結させた場合,消費者は,消費者契約を取り消すことができます。

そのため,受験指導,就職相談,結婚相談,金融商品,エステティック,健康食品など,
前述の重要な事柄に関して消費者の願望を実現することを謳う商品や
サービスを供給する事業者は注意が必要です。

これらの事業者においては,消費者の不安をあおって,
願望を実現するためには商品やサービスが必要であると
合理的な根拠なく進める営業活動が問題となりますから,
営業担当者などに対し,消費者の不安をあおって願望の実現に必要であると
根拠なく勧める営業手法を禁止する必要があります。

たとえば,健康食品の販売において,
「このままではお肌が大変なことになってしまいますよ。
今のうちに手を打つ必要があります。」などとして
化粧品セットを勧誘する場合には,注意が必要となります。

そして,このような勧誘を受けて上記の要件が満たされた場合には,
消費者は化粧水セットの売買契約を取り消すことができます。

(2) 加齢等による判断力の低下の不当な利用

加齢や心身の不調による判断力の著しい低下に伴い,生計,健康などの事柄に関し,
現在の生活の維持が困難になると告げられて勧誘を受けた場合にも,
消費者は,一定の条件の下に消費者契約を取り消すことができるようになりました。

つまり,これらの事柄に関して消費者が過大な不安を抱いているのを事業者が知りながら,
その不安をあおって,合理的な根拠がないにもかかわらず,
商品やサービスを利用しなければ現在の生活の維持が困難になると告げ,消費者を困惑させて,
消費者契約を締結させた場合,消費者は,消費者契約を取消すことができます。

この取消事由については,高齢者等,判断力が低下している消費者に対して
金融商品や健康食品等の商品やサービスを供給する事業者において注意が必要です。

たとえば,健康食品の販売において,認知症のために判断力が著しく低下してきた70代の消費者に対し,
「このサプリメントを毎日飲まなければ認知症が進んでしまうかもしれませんよ。」
などと勧誘する場合には,注意が必要です。

(3) 消費者契約の締結前に,事業者が消費者契約のための事業活動を特に実施したことと,その損
失の補償を請求すると告げること

契約の締結前に,事業者が,消費者から特別に求められたものではなく,
またその他正当な理由がないのに,契約のために調査したり,
情報を提供したり,あるいは物品を調達したうえで,これらの営業活動は,
消費者のために特に実施したものであるからといって,
その経費等を消費者に請求することを告げて消費者を困惑させ,
消費者契約の締結に至った場合,消費者契約の取消しが認められます。

たとえば,掃除機の販売の勧誘電話があり,消費者は断ったにもかかわらず,営業担当者から,
「会ってお話だけでも聞いてもらえませんか。」との申出を受けたために会うことにしたところ,
「遠くの営業所から商品を説明するためにわざわざ訪問して長時間かかったし,
高額な交通費が必要となりましたので,契約していただけないなら出張料金を払ってもらいます。」などと
告げられて勧誘された場合です。

事業者としては,消費者契約の締結前の事業活動に際して
その費用を消費者に請求することが必要な場合もあるとは考えられますが,
上記のように消費者に心理的な負担を与える形で進めると
契約が取り消されることになってしまいますから,
契約前の営業活動のために費用が発生する場合には,
その実費を消費者に負担してもらう合意を事前に取り付けるなどの手当てをすることが必要です。

(その2に続きます!)

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